何故、吸収した紫のコアメダルの数で映司に劣る真木が、その一撃を退ける事が出来たのかは、正直余りよく分からなかった。しかしそのあとのアンクからメダルを受け取った時の映司の悲しみ戸惑いと、「分かってる…お前がやれって言うなら」と微笑むような表情、決意に満ちた目と変身、アンクの声での「タカ!クジャク!コンドル!」この一連の流れと、アンクの姿が分身のように現れる戦いは、重ねた日々から生まれた二人の確かな絆が胸に伝わる素晴らしいものだったなと思う。
さて、たいてい戦いの物語の最終決戦では、主人公とラスボスとの「舌戦」が見どころとなっている。しかし今回の「オーズ」の場合、それは主人公である映司の役目ではなかった。世界の終末を欲する真木博士と語り合う、その役目は鴻上会長が担ったのだ。
私は一年間この物語を見ながら、この鴻上会長ってなんなんだろう?と思っていた。もしかしてコイツはらすボスなのではないだろうかと思っていた事もある。しかし結果的には、彼は実はそういう暗黒面とは別のポジションにいたようだ。
むしろ意外なほど彼の目的は高尚で、「欲望のメダル」こそ、停滞した人類に次の進化をもたらすと信じ、その可能性を本気で追った人物だったのではないかと思う。彼は巨万の富を得る過程で(鴻上ファウンデーションという会社が実質的に何をしている会社なのかは、この場合問題ではない)、自分を突き動かす「欲望」というもののパワーに触れ、それを追求するうちにメダルの存在を知ったのだろう。
「全てのものによき終わりを」願う真木とは正反対の鴻上。最終決戦前の舌戦を、彼等が担当したのは至極自然な事と言える。欲望のもたらす、前進し、生み出す力。「ハッピーバースディ!」命の誕生を祝うその言葉に偽りはなかった訳だ。そういう戦いのイデオロギー的な部分を主人公から切り離したのは非常に面白かった。なんせ映司は「そこが空虚だから」オーズの器として存在出来るのだから。
自分の利益の為にではなく、人類の全身の為にメダルを集めていた鴻上は、惜しげもなくその全てを器である映司に譲る。しかも人類が終末を迎えるのか進化を果たすのかの決戦の時、崩れゆく自社ビルで全てを受け入れ楽しそうにケーキを作っている。それだけの大きな志があるのなら、自分がオーズになればよさそうなものなのだが、彼自身は「自分はその器ではない」と自覚はしていたのだろうと思う。
戦いが終わって、コアメダルは全て壊れ、セルメダルは消えうせ、欲望のメダルは全て失われた。人々は皆、本来自分がいた場所に戻り、新しい一歩を踏み出している。
…結局、【欲望】による世界の終末も来なかったけれど、停滞した人類の進化が成される事もなかったんだな。
物語の中では何度も「欲望」という言葉が繰り返され、映司・アンク・比奈の関係も必要とか損得とか約束とか、そんな言葉で語られてもいた。だが物語が完結した今、「欲望」とは前進への大いなる力ではあったが、もっと大切なものがあるよと語っていたと思う。人の命や心を救うものは「欲望」ではなかった。
自分ではどうしようもなくて助けを求めた時に、駆け引きも損得もなく、自分に向かって差し出される腕。戻ってこい!と引き上げつなぎ止めてくれる力。それをなんと呼ぶのか、物語の中で語られる事はなかったけれど、そこには命や存在への無条件の肯定がある。
「誰かとつながる」物語は、明るいトーンで締めくくられた。
離れていてもつながっている仲間達。
そして、アンク …いつか、もう一度。
この場を借りて「仮面ライダーオーズ」という作品に関わった全ての方々にお礼を。一年間どうもありがとう御座いました!
Project BM! 仮面ライダーオーズ タトバコンボ


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最後のタトバキック、演出かっこよかったなあ。
一年間有り難う、仮面ライダーオーズ!