世代によって「僕たちのウルトラマン」はそれぞれだが、そこに継承されてきた光の遺伝子は変わらない。
一方「ウルトラマンメビウス」という世界でも、地上にウルトラマンが降り立ってすでに40年が経過していた。
新たにやってきたウルトラマンを懐かしがる世代。写真や映像、大人の話の中にだけ聞き知っていたウルトラマンを自分の目で見て喜ぶ世代。ウルトラの父を見上げ「俺が子供の頃に見たままの姿だ!」と感激して息子に話す父親。「ウルトラマンは負けないよね!」と言う娘に頷く母親… 人類がウルトラマンに、ウルトラ兄弟と呼ばれる存在に託す思いは受け継がれ、また新たな伝説を作っている。
そして彼等が知らないうちに、ウルトラの星の光の戦士達は、空白の時も密かに地球を守っていた。太陽系の外で宇宙からの脅威と戦ってくれていたゾフィー。己のウルトラマンとしての力を失いつつも、静かに地球人として生きながらヤプールの封印を見守っていた四兄弟、後進を育て宇宙を警備する役割を担っていたタロウ達。彼等の愛は絶えることなく注がれていたのだ。
そのことに気が付き「ウルトラマンの心に応えたい」と願ったサコミズ達と、「ウルトラ兄弟達が命を賭けて守った地球で自分もその心を受け継ぎたい」と思ったメビウス。二つの思いがリンクして、この地球に再びウルトラマンが光臨した。
私は前回のメビウス考で、「継承」されることが大事であるという話をした。種の財産としての「より善き魂」を次の世代に伝えることは進化に不可欠だ。ならば、「ウルトラマン」の世界でも、ウルトラの力と光の精神は、いつかどこかの星の人々に受け継がれなくてはならないはずだ。彼等の光が共鳴を呼び、受け継がれ、広がってこそ、本当の宇宙の平和が訪れるのではないだろうか。
昔、ウルトラの星の人々は地球人と同じ人間だった。今、地球から見えるそウルトラの星の輝きは、まだ彼等が人間だった頃のものなのだ、とミライは言う。
私はこのエピを見た時、「もしかしてウルトラの星の人々は、地球の人類に、ウルトラの力の継承の可能性を見ているのかもしれない」と感じた。ウルトラマンと地球人、出会いは偶然だったろう。しかしウルトラ兄弟達は、その中にある光の遺伝子の可能性を見出し、まだ未熟で拙いが真善美の種が埋め込まれた人類の心を愛したのではないか。「彼等はまだ幼い子供のようであり、守るべき存在であるが、いつか我々と肩を並べる日が来るだろう」と。
そして人類は、己の力で冥王星のゾフィーと出会い「ついにここまできたか」と言わせた。共に戦う力はまだないが、せめてウルトラマンの心に応えようと決意した人々。「ウルトラマンメビウス」の最終回には、人類が幼くも精一杯の力で、ウルトラマンと共に戦う姿が描かれたと思う。
現実に生きる私達と、ドラマの中で生きている人々、そしてウルトラ兄弟。それぞれに伝えられていた光の遺伝子が、ドラマが進行することで貫かれてゆく。
最初は精神的な弱さを見せたメビウスは、多くの戦いや交流を通じて本当の強さを自分のものにする。人類の脆さや醜さ、優しさや美しさを受け容れ、そのまま愛せるウルトラマンの心を継承する。
そしてメビウスやウルトラ兄弟達の戦いを通して、ドラマの中で人々は変わっていった。危機的状況にエゴをむき出しにするのではなく、彼等の光を信じることを選択出来るようになる。
そんな「ウルトラマンメビウス」という物語を通じて、私達の胸の中に溢れる思い、親子や友人同士で交わす会話、その中に光の遺伝子が潜んでいる。
ハヤタは言った。ウルトラマンは神ではない。
ではなんなのか。
私達にとって、ウルトラマンは、ヒーローなのだ。
もしも神ならば、人は祈るだろう。願いをかけるかもしれない。懺悔し許しを請う人もあるだろう。
しかしウルトラマンは神ではない。ヒーローである。ヒーローと神との決定的な違い、それは【憧れ】だ。
どんな脅威にも屈せず、決して諦めず、最後まで戦い抜く光の魂。私達はそれを見て憧れの心を抱く。かっこいい!なんてすごいんだろう!僕も、私も、ああなりたい。ウルトラマンになりたいと。
【憧れ】は、それを胸に抱き続ける限り、いつか、その姿を自分のものにすることができる。
物語を超え、世代を超え、私達には光の遺伝子が貫かれているのだ。それは憧れの形で、いつも共にある。
ウルトラマン。私達の胸に輝くその名前は流星の形をしている。
ウルトラマンメビウス考・終
長々と読んでいただいて有難う御座いました。
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個人的ベストエピはレオのかなあ…