2008年05月29日

「隠し砦の三悪人〜THE LAST PRINCESS」

 ●mixiに書いたレビュー転記

 かつて護国の誇りと祈りと共に海中に沈んだ戦艦大和が、アニメーションの世界で宇宙戦艦ヤマトになって蘇ったように。
 日本映画史に燦然と輝く巨星の傑作が、SFの超新星の手によってファンタジックな冒険活劇に魔改造された。
 「隠し砦の三悪人」を観たスピルバーグが「スターウォーズ」を生み、更にそれを観て育った次世代の挑戦。全体のフォルムを生かしつつも、新たな設定やキャラクターとそこから生まれる視点が、物語をダイナミックに塗り替えていく。それは単なる焼き直しではない。限りなく現代の感覚で綴られたからこそ、一つの作品として成立しており、それ故に元の名作の持つ美しさと偉大さを決して侵すことはないのだ。
 全く不満がないわけではない。が、2時間を存分に楽しませてもらった。後味も非常に良く、気持ちよく映画館を出られること請け合い。
 リメイクというプレッシャーの中、これだけ作り上げたスタッフの心意気には星を5つ差し上げたいが、黒澤明という巨星に敬意を表する意味で星4つで。



 【ネタバレ感想!】  ↓未見の人は読んじゃだめだお


●理屈抜きで面白かったと思う。むしろ黒沢版の本家を観てから、このリメイク版を観るのが面白いかもしれない。どうせ半世紀の間【神作品】と呼ばれた名作に挑むのなら、好き放題やるぞと言う潔い程の魔改造ぶり(笑)がすげーよ。

●しかしこの作品の宣伝の仕方は不満だ!
 あのラブストーリーっぽいTVCMは何故じゃ。あのシーンを宣伝に使うのは何故じゃ。姫は納得がゆかぬ!(笑)

●冒険活劇。時代劇風ファンタジー。いやむしろ、遠い昔、遥か彼方の銀河系のどこかの星での物語。そう思うと色々合点がいく。
 スターウォーズが「隠し砦…」にインスパイアってのは有名な話なんだけど、この樋口版はスターウォーズを経過してのリメイクなんだなというのを感じたね。もしも乱暴な言い方をしてもいいのなら、R2-D2+ルーク・スカイウォーカーで武蔵、C-3PO+ハン・ソロ(金に汚い・笑)で新八、オビワン+ チューバッカの体力で六郎太!これに姫をプラスすれば、ほーれこれでスターウォーズの出来上がり。しかもダース・ベーダーも出てきてたから(笑)

●チャンバラシーンで、やたらと派手なSEやエフェクトが入るのがファンタジーっぽさに拍車をかけている。いっそのこと、武蔵のかごの鳥を変な空飛ぶ生き物にしても面白かったのでは?

●序盤からすごいテンポでぽんぽん進む話。導入がとんでもなく分かりやすかった。あのテロップは、スターウォーズのオマージュなんかなあ。所々で違う展開を見せながらも、ポイントは原作を踏襲しつつ話は進む。
 それがまずダース・ベーダーの登場で唖然とし、それが顔に傷を持っている男であることに驚き、関所の通過のシーンでおよよっとなり、町で買い戻した娘が死んでしまって正体バレ。少しずつ広がっていた黒沢版との違いがここではっきりと別方向に向く。こういうのは面白いよね。

 ●実は原作「隠し砦〜」を観たとき、「きっと途中で百姓に自分たちの事情と正体を明かして協力を求めるんだろうなあ」と思っていたらそれがなかった。その日暮らしで意地汚い民百姓と、大義のために命をかける武士達は住む世界が違うのだ。外の敵はもちろんのこと、仲間であるはずの百姓コンビも最後まで騙して大義を貫く。
 しかし今回のリメイクでは、その「正体バレ」があり、なおかつそこからの展開が良かった。結果的にキャラの立ち位置が、姫を守護する三人のナイト風になっている。
 また今作は、名もなき民の悲しみや怒りにもフォーカスしており、支配層である武家に対して一矢報いる展開があった(最後の砦の爆破)のはナイス。なにより、どんでん返しでもある金の運搬がよかった。それまで自分のために人が無惨に殺されていくのを「悪人は私だ!」と自分を責めていた姫に向けられる、民の敬愛の心。城の門が開いたときは涙ぐんだよちくしょー。
 リメイク版では、ラストで武蔵達が褒賞をもらわない、同じ場所に立って見つめ合っている、その後姫は城に上がり武蔵達は門の外へ出る、という辺りが、元祖「隠し砦〜」との違いを象徴的に見せてますね。

 ●あんな大爆発から、人一人馬一頭連れて脱出は有り得ない!(笑)
 いやむしろ、その脱出劇すごく見たかったんですけど。武蔵&姫と別ルートにしちゃったから仕方ないのか。

 ●黒沢版を見た後、「で、どこが隠し砦の三悪人だったのだろう?」と思ってしまったのは正直なところだったんだけど、樋口版でそのフォローを見ることになるとは。考えたもんだよなーと。

 ●全体としてと非常に良かったけど、いくつか不満点もないわけじゃない。
 武蔵が姫のことを「雪」と呼ぶのは、ちょっと残念かなー 私は「姫」呼び萌えなのよ(笑)いやいや、そんな個人的な好みは置いておいて。この「名前呼び捨て」が時代劇としては最悪であり、ファンタジーとしてならばOKむしろナイス!というポイントではないかと思う。私なんぞはむしろ、ファンタジーだからこそ「姫!」と呼んでえぇぇぇぇ〜というタイプだけどな。いや、「姫」呼び萌えですからええ。
 火祭り。「こんなに踊り狂わねばならぬ程、民は辛い思いをしているのか?」とかなんとか、姫が言うシーンがあったけど、私は個人的にはそこで武蔵に「違う!そうじゃない」と言って欲しかったかなあ。なんか憂さ晴らしで踊るお祭りのようになっていて、まあ確かに祭りって現実にはそういうのもかなりあるし、そんなことを当の武蔵が台詞で言ってるんだけどね(笑)
 元来は火を囲んで踊るという行為は、生命のダイナミズムそのものを象徴しているよね。民の持つ純粋な命の力って言うかなあ。それは外から踊り狂う人々を見ているだけでは分からないことで、共に踊るからこそ感じられる命の躍動だったのではないかと。
 自分のために死んで行く人々を前に傷ついた姫が、アレを見て悲痛な面持ちになるのは非常によく分かる。しかし、武蔵はこの祭りを元々知っているのだから、そこで「そうじゃない、一緒に踊ってみろ」と、姫の悲しみと誤解を否定して欲しかったなあと感じてしまった。ああでも、そんなセリフは邪魔かもしれない…結局踊りに誘ったのは武蔵だからな。
 「裏切り御免」こうきたかーと(笑)捻ったよね。これは不満とか、いい悪いじゃなく、黒沢版があまりにもかっこいいから、損だ。
 あとED。コレを使うなら、劇伴でも多少ポップな音を入れても良かったかも。ちょっとギャップにコケた(^^;;; 画面は爽やかな終わり方だったよね。



 などとぐたぐた書いたけど、面白かったよ!
 神作品リメイクをこれだけ仕上げるなら、同じスタッフでオリジナル作品を作ったらどれ程面白くなるかと、考えてちょっとニヤニヤしました。誰か樋口監督に、SF冒険活劇を撮らせてあげて下さい。おながいします。





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posted by K at 09:42| Comment(0) | TrackBack(7) | 映画・DVDなど