主人公・纏流子のパートナーは渋い声で喋るなぞのセーラー服と、意味不明な事を熱く語って周囲を巻き込んでしまう満艦飾マコ。彼女がサブキャラの中でも重要な位置をしめているという、この無茶苦茶さが如何にも「キルラキル」らしい。いや、ハードなファイターの傍らにコミカルなキャラが配置される事はよくある。そのコミカルさが限りなく直角に近い斜め上で、見ているこちらが煙に巻かれるレベルであるところがすごいところだなと思う。
だが彼女の言葉に「さすが満艦飾!」と思える頃には、すっかり世界にハマっているのだろう。
じゃあ「キルラキル」は物語的な大きな枠を全く視聴者に示していないかというと、決してそうではない。それは流子のライバルであり敵対勢力のトップに君臨する鬼龍院皐月の存在だ。
後に流子に「太眉への字口」と言わせしめる彼女の表情は常に堅く、言動は厳しく、常に流子のすることの先を読み己の駒として利用している。そこには明らかに何か目的がある。特に第三話で神衣純血を着る決意をした時の「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」という言葉は、その意味を知っていると「おや?」と思わせる。
また、同じく三話の鮮血を着ての闘いに覚醒した流子の一撃を避けたとき。皐月はふっと微笑んでいる。似た意味ありげな微笑みはもう一度あり、第七話で流子とマコが極制服の力に飲まれる事なく、互いの絆を取り戻したとき。やはり去り際に口元が微笑んでいるのだ。
しかしその微笑みは印象的だがそのとき限りのもので、次にはもういつもの"への字口"に戻っている。あれはなんだったんだろうと思わせたままで次の展開に移ってしまう。
鬼龍院皐月に絶対の忠誠を誓う四天王の存在も、物語上とても大きい。「何か目的があるらしい」絶対君主に対して、その目的は共有されているのか、いないのか。その忠誠度はどの程度なのか。
そもそも四天王なんて存在は、主人公のヤラレ役になるか裏切るか、になるというのが割とパターンだ。その四人組も「筋肉・武闘派・知性派・美少女」と駒が揃っていて、生徒会室とやらもやたらと怪しい。まあ順番から言って筋肉が最初に戦維喪失して、「蟇郡がやられたようだな…」「ククク…奴は四天王の中でも最弱…」「本能字学園の面汚しよね」とか言われるんじゃないかと(笑)でなかったら乃音か犬牟田が裏切る。もしくは犬牟田がすべてを操っている!というパターンがありそうだな、とか(笑)
それが早くも第六話で猿投山がいきなり流子と戦い、彼と皐月の過去の話が描かれる。そこから四天王にスボットが当たるたびに、意外と彼らの忠誠というか、皐月との絆は深いのかなと思わせる。そして塔首頂上決戦で流子に破れる度、応援席のマコのところに蟇郡→犬牟田→蛇崩と揃って来て、ワイワイ言い合う頃には可愛げさえ感じさせるようになる。
普通のバトルもので四天王が捨て駒扱いされてしまう場合、負ければそれっきりだ。でなければ主人公側につくか解説役で残るか… だが「キルラキル」の四天王は負けるとパワーアップしてもらえる。猿投山戦の時に気付くべきだった。物語は明らかに四天王を成長させている。
塔首頂上決戦がとんでもない乱入者のせいでぶち壊された後、皐月は四天王に「お前達はまだ強くなる」と言っていた。明らかに皐月は何かの目的のために四天王を戦士として「育てている」意図が、この頃から見えてくる。いや、ここに来てやっと知らされたと言うべきか。
…というような物語の大枠は示されているものの、実際リアルタイムで物語を追っているとそれどころではない。四天王ってどんな戦いするのかなーとか、猿投山リベンジするかと思いきや針目縫が乱入して来たりとか、父の仇に暴走してとんでもないところをマコに助けられたりとか、やっとひと心地付いたところで鮮血バラバラとか、三都制圧襲学旅行とか、まーイベントが盛り沢山だ。
展開が突拍子もない上にスピーディ。しかもそこで見せつけられるビジュアル…いや、「アニメ力」とでも言うべきか。画の力が圧倒的に迫ってくる勢いに、つい夢中になって見入る。魅せられる。特に第十五話、三都制圧襲学旅行の時の流子と皐月の一騎打ちは素晴らしかった。そしてこの戦いこそが、前半のピークでもあったのだ。
後から思えば「隠されていたのか」と気付くかもしれないけど、見ている時はそんな風に考えている余裕はなくて、ただただ作品に気圧されるが如く、目の前に繰り広げられる戦いを眺めていた。
派手な演出やスピードに馴れた。
キャラクターの作り込みが重ねられ彼らへの思い入れができた。
さりげなく伏線が張られていた。
なんだかわかんない色々なことが「まあいいかな」と気にならなくなったこのタイミングで!
怒濤の展開で煙に巻いていた「キルラキル」の世界の奥に存在していた謎の物質「生命戦維」の謎が明かされる。
まだつづく!