「キルラキル」が終わってしまった寂しさを、こんな風に感想考察書きながら埋める今日この頃。
思い返せば毎回毎回、画面からはものすごいエネルギー量が放たれた。濃いぃキャラ、捲し立てられる台詞、圧倒の演出、怒濤の作画で、スタートダッシュから通常の三倍の速度で駆け抜ける!
そう言う意味では「キルラキル」は、見ている人間にも少なからず負荷を与えるアニメだったかもしれない。高い熱量のある作品が持つ「巻き込まれる感じ」があった。
まーでも、一筋縄でいかない作品なんだな。
そこがこの物語の最大の魅力であり、ものすごいところなんだけども。
「キルラキル」の前半は、学園制覇モノのパターンをキッチリ踏んでいる。
力による露骨な階級制で支配された学園と、その頂上に君臨する絶対者。そこにふらりとやってくる転校生。成り行きから戦う事になり、学園vs転校生の全面対決へと発展して行く。絶対者とはライバル関係ではあるが、まだ力は及ばない。でもいつか倒してやるぞ、と。もちろんそれだけではなく、父の死の謎やら怪しげな組織やら絡んで来て、謎解き的な要素も含んでいる。
これだけ文字で書けば確かに昭和っぽいし、絵柄も今時の「萌え絵」とは一線を画した硬派な感じだ。と同時に前にも書いた通り、劇中の時間の流れがとてつもなく濃密な、最先端のアニメの印象がある。この作品の複雑な色合いを深めているなと思う。
しかしそれらは絶妙にブレンドされており、きっちり世界は作り出している。なのに私は、どうしても物語に乗り切れなかった。最大の理由は、主人公・纏流子の言動だ。
私は序盤、「なぜ流子は戦っているんだろう?なんのために変身する?」という、ぼんやりとした疑問を抱き続けて見ていた。
例えばひょんな事から力を手に入れた変身ヒーローものなら、物語の早いうちに「戦う理由」を決意するお話が必ずある。でも流子には明確なそれがない。売られたケンカを買い、状況に流されて、行き当たりばったりで戦っているだけだ。三話は確かに一つの大きな成長物語だったけど、これも神衣・鮮血の着こなし(絆でもある)のステップアップであり、戦う決意のお話ではない。
また押し掛け親友の満艦飾マコは「戦う原因」にはなるけれども「戦う理由」ではない。彼女を守る!とかそういうのとも違う。「流子ちゃんがんばれ!」「しょうがねえなあ」という感じだ。しかもそのマコの言葉は恐ろしく意味不明なのに(笑)無駄に高いテンションに何故か納得させられてしまうとんでもない女のコだったりする。
だから見ているこちらは「なんだかよく分かんないまま、ズルズルっと戦っちゃってるのに、テンションだけはめちゃ高いよな」と思っていた。敵役である鬼龍院皐月がなにやら考えがあり、しかも「鴻鵠の志」を持っている様子なのに対して、流子は主人公でありながらキャラとして立ち位置が不安定だ。
しかも主人公の過去がようやく語られたのは8話。「幼い頃から親に放ったらかされた末にグレた」過去も「なぜ父が殺されたか知りたかった」という動機も、その時に明かされた。とにかく流子は序盤、状況に流されマコに煽られ(笑)襲い来る極制服の生徒と戦い続ける。
しかし今なら思う。なぜ戦うのに理由を欲したんだろうかと。鮮血が己の力を出し切れずに血のつながりを求めたように、私も流子が戦う理由がないことにこだわったんだろうか?偉そうな奴がいるからぶっ倒す、でも十分のはずだ。
それこそ昭和のアニメには、戦う理由なんていらなかった。そこに敵がいる。それだけでよかったのに。
よくよく考えてみると、現代のバトルもの…特に熱血系のバトルものの主人公は、必ずなにか自分の願いや主義主張、譲れない思いなどがある。別にそれは「君だけを守りたい」でもいいし、「海賊王に俺はなる!」でも「オラ、強くなりてぇ」でもいい。戦う原動力のようなものが存在している。それがない場合は「戦う決意」シークエンスが必須だ。
複雑な現代社会と人の心が、物語ですらも単純に善と悪で割り切る事が出来なくなっている。
そこには対立する理由があり、それぞれの主義主張のぶつかり合いがある。そんな物語に馴れすぎて、バトルものを見る時はついつい「なぜこの主人公は戦うのだろうか」と考えてしまっていた。流子は高校二年生の女の子。大義はなくて当たり前。そもそも別に戦うのに大きな理由はなくてもいいんじゃないの?
それが正しいこと、当たり前の事と思っていたけれど。
私は自分が想像しているよりも、ずっと頭が堅い…
可能性って、無限にあるというのにね。
でもその辺がどーでも良くなった頃から、どんどん面白くなって行くんだよなー(笑)
こんなに書いたのにまだ7話に届かなかった。まだちょっと続くんじゃ。
ところで【燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや】って、「声に出したい中国故事・ベスト10」を作ったら、絶対五位以内に入るよね!
2014年04月11日
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