2013年02月12日

特命戦隊ゴーバスターズ 二つの最終回

 一年間、世界をヴァグラスの驚異から守ってくれた特命戦隊ゴーバスターズが最終回を迎えた。そこで久々に、ちょっとだけ、簡単に、このブログに思う事を寄せたい。
 この作品に関わった全ての皆さまにお礼を。一年間ありがとうございました。すごく面白かったです!



 それにしてもハードな内容の戦隊だったなあと思う。13年前の突然の悲劇と、来るべき日に備えて三人の子供達に託された使命。「全部元に戻す」という約束。それを全力で支える大人達。キャラの配置のバランスが良くて、コミカルなやり取りが戦隊としての明るさを保ちつつも、そこに描かれていた世界の真ん中には、あの日あの場所にぽっかりと空いてしまった暗闇が影を落としている。
 そこには失われた彼等の日常があった。平和だったら本当は得ていたはずの優しい13年間があったはずだ。しかしこの辛い戦いの果てに、きっと全て元に戻すと。
 元来の戦隊モノならば、恐らくその願いは叶ったろう。多くの障害や苦難を乗り越え、決して諦めない心と仲間との絆で、失ったものを取り戻してハッピーエンド。それが王道としてのスーパー戦隊であったはずだ。しかし、そうはならなかった。

 「13年前は元に戻せない」

 そんな、それまでの最大のモチベーションであり、戦いを見守ってきた視聴者の願いを全て断ち切る決断をする亜空間での決戦 Mission30「メサイア シャットダウン」。この戦いは圧巻だった。ヒロム、リュウジ、ヨーコの三人の成長と絆が丁寧に描かれたからこそ、黒木や陣ら大人たちの三人を思う気持ちが伝わってきていたからこそ、その決断をここでするか!と熱い思いが込み上げた。彼等の過ごした13年は無駄ではなく、彼等の両親の覚悟を受け止める強さを築いたのだと。
 …が、普通だったらここで最終回になってもおかしくはない。なのに、これがまだ30話。続きがあるのだ。



 やはりそれは、「東日本大震災を経て作られたスーパー戦隊」だからなんだろうなあと、思わざるを得ない。
 私は今回の戦隊は、ほとんど人様のブログを読んだり雑誌の記事をチェックしたりしないでいるのだけど、恐らくこの「ゴーバスターズ」は3.11の東日本大震災が大きな影響を与えているのだろうなと思う。…と、ここでふと検索して見たら、やはり同じ事を思っている方は多いようですね。(私自身はあまり「ゴーバスターズ」を原発そのものと重ね合わせては物語を解釈していないのだが、エネトロンという設定そのものは、やはり無関係ではないなとは思います)東映の公式インタビューでも語られているのでしょうか?ちょっと簡単に調べただけだから分からなかったんですけど。

 ヒーローは諦めない心と絆で奇跡を起こす。しかしそれは、悲惨な現実の中ではきれい事にしか思えない。突然起こった悲劇によって失ってしまった日常の中で、非現実的なヒーローの存在は時として空しい。
 ちょっと話はズレるが、2012年春のウルトラ映画「ウルトラマンサーガ」もまた、東日本大震災とウルトラマンを重ね合わせたような作品だった。その中で主人公は、自分を救ってくれなかったヒーローへの遺恨が、心の傷となって戦う事が出来ない。そしてその物語は非常に「ウルトラらしい」ものだった。(未見ならおすすめ!・笑)

 ではスーパー戦隊である「ゴーバスターズ」はどうしたのか。結論はまず「失ってしまったものが取り戻せない」という前提を受け入れたものだった。自分が強く成長する事で、まず辛い現実を受け入れる。そして、本当に大切なのはそこからなのだ。
 ここから彼等の戦いは、「元の平和な世界に戻す戦い」ではなく「その遺志を受け継いで、新しい平和な世界を築く戦い」になった。
 30話以降、ヒロム達は更なる成長を見せる。人々に同じ辛い思いをさせないという決意がパワーアップを成し遂げ、更なる力・タテガミライオーを受け継ぐ。熱暴走するリュウジに涙していたヨーコが、強い意志でそれを止めるエピや、怒りを両親からのプレゼントだったオルゴールの音で鎮めて戦うヒロムのエピも良かった。巨大な敵とのクリスマス決戦を経て、最終的にヒロム自身に埋め込まれたメサイアのバックアップカードを、陣が犠牲になる事で削除し、圧倒的に強く成長してしまったエンターに打ち勝つのだ。
 また、エンターが人のデータを集める過程で、取り込んだが故に不快に思った未完成で不可解な人の要素。それがエスケイプとの関係で描かれたのはとても興味深い。人と人とのつながりというのは、簡単に割り切れるものでも思いのままに操れるものでもない。だからこそ可能性もあるし尊いのかもしれない。

 正直に言えば、私は30話の戦いが物語全体のボルテージが最も高かったかなとは思う。最大のカタルシスがある展開なのでそれか仕方がないだろう。しかしその後の戦いとそこに彼等の成長を重ね合わせたのは、子供達に向けて作られるヒーロー番組の姿勢として、非常に良心的だなと思う。ちゃんと物語として「ならどうするのか」を「提示して見せた」のだから。
 悲しみを受け入れ、乗り越えた所にあるものを見つけたゴーバスターズの三人。残された子供達が、成長し、託された思いを受け止め、新しい明日へと向かう。




 失ったものは取り戻せない。しかし受け継がれるものがある。繋がり補い合うものがある。だから人は素晴らしい。
 




 
posted by K at 22:19| Comment(5) | TrackBack(0) | その他特撮関連
この記事へのコメント
ども、お久しぶりです…つか、ここでは「あけましておめでとうございます」になるかな?

さて、当初〈ミッション・インポッシブル 相棒とエヴァ風味〉な印象だったゴーバスターズ、明らかに大震災を意識してますね。
その最たるものが、ヴァグラスを倒しても戻らなかったヒロム達の家族や研究施設の職員。
いつもの戦隊(というか普通の子供向けヒーロー番組)だったら、ヴァグラスを倒したら家族や職員達が元に戻ってめでたしめでたし…となるところでしょう。
それを中盤で「失われた命は元には戻らない」とハッキリ表現した辺り、特に被災した子供を強く意識した展開なんでしょうね。

ちょいシリアスな雰囲気で目先の変わったこのゴーバスターズ、1年間楽しめたのは楽しめたんですが、一点引っ掛かったままだったのが、ヒロム姉の存在。
主人公の姉、番組のメインライターが小林靖子…どうしても「電王」の愛理を思い出してしまいますが、中の人がグラビアに写真集・DVDにと多忙なためか出番が少なく、印象の薄いキャラクターになってしまいました。
これがもう少しスケジュールに余裕のある人だったら、ストーリーへの絡み方も違ったでしょうね。
Posted by おーきゃん at 2013年02月13日 05:08
おーきゃんさん、こんにちは!あけましておめでとうございます(笑)
いやあお久しぶりで御座いますよ。

スタートした時はシリアス系メカ戦隊だなーなんて思っていたんですけど
彼等の抱えている事情がなんとも切ない…
でもあの震災を経た後、戦隊ヒーローが子供達に贈るメッセージは何なのか
真剣に考えたんだろうなという作品になっていたと思います。

ヒロム姉は、そーですねー、あんまりストーリーに絡みすぎても
私なんかは「うぜえぇぇぇぇぇ!」になりそうなので(笑)
あんな感じくらいで良かったんじゃないかなあと思っています。
彼女、流石の私も名前知っていますから、売れてますよね。
もしかしたらがっつり姉が絡んでくる「ゴーバスターズ」も
あったかもしれないなと思うと面白いです。
Posted by K at 2013年02月13日 12:47
はじめまして。
今回初めてホームページを拝見しました。
大変番組の核心を突いたレビューで共感しました。
私はゴーバスから初めて戦隊モノというものに関心を持った、フツーのアーティストです。
エネルギー問題に取り組む、というので、これはすごいテーマだと思い、ブログも立ち上げました。
当初は、これが子供番組かと思うようなマジな展開で、大いに期待したのですが、テレ朝かどこぞのスポンサーの介入によるものか、エネトロンに関する記述が一切なくなり、30話でブログを閉鎖しました。
その後の人間ドラマは、おっしゃるように素晴らしいもので、結局最後まで視聴しました。
このドラマは、間違いなくふたつの大きなテーマがあったと思います。人間とは?という永遠のテーマと、他方はおそらく原子力です。
エネトロンは、クリーンを売り物にしてきた原子力のメタファーでしょう。だから圧力がかかった、と見ています。
それは最終回に、エネトロンタワーの真向かいに設置された「風力発電機」の間をヒロムが駆け抜けていく、という構図に明らかで、これは番組に圧力をかけられたスタッフの最後の「抵抗」と見ることが可能かも知れません。
いずれにせよ、並みいる低俗大人番組の中で、子供向けの特撮がこれだけ気を吐いた、という事実は、斜陽を迎えたテレビ業界の中で特筆すべきエポックであったと思うとともに、今後、またこのような真剣な番組が戻るよう願って止みません。
Posted by 三木俊治 at 2013年02月17日 10:38
三木さん、こんにちは!はじめまして。
書き込みありがとう御座います。

そうですね、「ゴーバスターズ」はかなりずっしりとしたドラマがあって
久々に特撮を見る大人にとってはかなり衝撃的といいますか
「子供番組でこれだけのことをするのか」と唸らされる作品だったと思います。

この番組の中で描かれた「エネトロン」は多分、原発を意識していますが
三木さんのおっしゃる通り、そこを突っ込んで掘り下げる事はしませんでしたね。
「風力発電の間を駆け抜けるヒロム」は気付きませんでした!
ちょっと面白い視点ですね。
果たして「本当に」原発を意識してそれを批判する物語を展開する予定だったから
某所から圧力がかかって方向転換を強いられたのか、は
どこかでスタッフさんの口から語られる事もあるのかもしれません。
そうかもしれないし、そうでないかもしれない。
物語そのものからはそれは読み取れないなというのが個人的な結論です。
なんにしても、「ゴーバスターズ」はその戦いの意義を
人工知能vs人間にフォーカスし、突然の喪失から再起する強さと
失われた命を含め紡がれる人々の絆について、真正面から描くことを
選んだんだなあと思います。
いやあ、本当にどうだったんでしょうねえ。

ラスト三行、心底同意致します。
特撮は子供向けだからこそ、こういう作品作りが可能なのかなと
私は感じています。今後もかくあって欲しいですね。
あと関係ありませんが、私も伝統芸能の世界ではありますが
音楽の世界にちょっと足を突っ込んでいます。
アートの方面でも、お互い頑張りましょうね!と
勝手にエールを送らせて頂きました。ではでは♪
Posted by K at 2013年02月19日 07:35
こうやって更新が止まったブログ、星の数ほどあるけど検索時に邪魔になると思ってしまうのは自分だけなのか
Posted by あ at 2014年01月29日 02:15
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