2010年04月24日

侍戦隊シンケンジャー・考察 其の九「正統」

 シンケンジャーとして選ばれた若者たち。彼等は、それぞれ葛藤を抱えたまま、それでも人の世を守る為に戦う。
 長きにわたり続く戦い。家系に引き継がれるモヂカラにはそれぞれ特色があり、その中でも圧倒的に強く破壊的な力を持つのが、当主である志葉家だ。志葉家が倒れる時は、すなわち人の世の終わり。だからこそ、侍達は命を懸けて当主を守り、当主はその重責を背負い続けなくてはならない。





 志葉薫は志葉家十八代目の当主であり、真のシンケンレッドの継承者だ。シンケンジャーの弱体化に危機感を抱いた先代と家臣達が、影武者を立ててまで守ろうとした存在である。外道衆に対する唯一の対抗策である封印の文字を操れるのは、志葉家に伝わる火のモヂカラだけだからだ。
 志葉家だけに伝わる強烈なモヂカラ。その力は他を圧倒するものがある。あくまでも推測ではあるが、年も若く実戦経験もない薫姫が、外道衆と互角以上に戦えたのは、やはり潜在的に持つモヂカラの強さもあるのだろう。
 何より彼女は、先代すらマスターできなかった封印の文字を会得している。元々の才能。自分が生まれる前に死んでしまった亡き父への思い。影武者に頼る事を侍として潔しとしなかった使命感。実践から離れている事で修業に集中できた環境。封印の文字習得の理由には様々な要因が考えられるが、側近丹波が言うように「血のにじむような努力」であったことは間違いないだろう。
 確かに戦いは影武者である丈瑠が出陣するので、薫姫は安全だ。しかし自分の身分を偽って、外道衆から隠れるように生きていなくてはならないのもまた事実。志葉家当主としての孤独を抱え、一人きりの戦いをしていたのは、丈瑠も薫姫も変わらない。
 誰よりも中心になって戦わなくてはならないはずなのに影武者に守られていると言う、そんな立場を侍として潔しとしなかった薫姫。揺るぎない意志と聡明な判断力を持ち、人の気持ちを察する事の出来る良き当主だ。私は「シンケンジャー」の物語の中で、彼女は気の毒な立場であると思う。侍も黒子達も、どこか影武者・丈瑠に強い思いを持っており、どこか報われないなという印象があった。前回書いたが、最も心情的・立場的に丈瑠に近いはずの源太が姫との共闘を申し出る事が、キャラ的に大きな救いであると思う。
 また、丹波と言うコミカルで少し憎たらしい側近をつける事で、視聴者の不満や憎しみが直接薫姫に注ぐのを防いだ。よく聞くとちゃんと丹波は姫の立場を主張しているのだ。ただ我々視聴者は、ずっと応援し続けた丈瑠に思い入れてしまうのでカチンと来てしまう。侍達と視聴者の感情が、ちゃんとリンクしているのは見事だなあと思う。



 苛烈な戦いの日々を過ごす事で、起こってしまった光と影の逆転現象。それは人生を大義に捧げ自分の役目を果たした丈瑠の得たものの結果ではある。

 しかし、シンケンジャーはあくまでも、志葉家を中心に代々の侍の血筋だけが引き継ぐモヂカラで戦う集団だ。真の継承者の前で、影がその立場を失うのは当然だろう。それは所謂「建て前」などという軽々しいものではない。たとえどんな理由、どれほど強い思いがあろうと、侍達は姫を守って戦わなくてはならない。でなければ、外道衆から人の世を護る事は叶わないからだ。
 それを誰よりも理解しているのは、丈瑠自身だったろう。そして姫が表舞台に立った事で、偽りの立場が露見した。丈瑠は人々を守り、侍達の命を預かる重荷を、一生背負い続ける覚悟をしていたのだが、それすらも無用のものとなった。あとには何も残らない。志葉家当主の影武者とは、一人の青年の人生を捧げなくてはならないほどの重みだったのだ。



 全てを失った(と感じていた)丈瑠を、源太が追う。しかし源太の前から丈瑠は去る。
 源太はシンケンジャーという立場を捨てて追いかけたが、丈瑠を救う事は出来なかった。私は、それは源太は丈瑠にとって、最初から立場や大義を超えた友達だったからではないかと思う。彼は「丈瑠が失ったもの」には含まれていないのだ。たとえ「殿様」でなくても、源太は丈瑠の友達だったろう。



 源太が見失ってしまった、彷徨う丈瑠を見つけ出したのは、幼い頃から共に過ごした日下部だった。
 日下部は、丈瑠を志葉家当主として教育する役割であり、亡き父の代わりでもある。二人の細かいやり取りを見ると、日下部がどれほど丈瑠を大切に思い、育ててきたかが分かるし、丈瑠も日下部には心を許しているのを感じられる。しかし、それほど深いつながりを持つ日下部でありながら、十蔵との戦いに身を投じようとする丈瑠を留める事は出来なかった。
 これは私なりの考えなのだが、日下部は丈瑠にとって「身内」であり「同じ罪を背負うもの同士」だからではないかと思う。唯一本当の事を知っているジィだからこそ、丈瑠は本音を言える。そして日下部が仕えているのも実は元来の当主薫姫であり、「姫を守る為に偽りの当主を育てている」立場でもあるのだ。丈瑠は迷った時日下部に相談するが、時折見せる獅子折神と遊ぶ丈瑠の描写はどこか寂しげだ。獅子折神は今際の際の父が、幼い丈瑠に手渡したアイテムであることを考えると、ついその心情を深読みしてしまう。
 日下部の丈瑠を純粋に大切に思う心に嘘偽りがない事は、空っぽになってしまった丈瑠を見つけ出した事で十分に伝わってくる。日下部でなくては探せなかったろう。
 それでも、何かを失ってしまった丈瑠の心を埋める事は出来ないのだ。間違いなく日下部は丈瑠を息子のように大切に思っているにも関わらず、丈瑠を留めるには、足りない。




 大義を失い、空っぽになってしまったヒーロー。

 通常、戦隊もののクライマックスは、最強の敵が現れて、ヒーローはどう戦うのか?に焦点が絞られる。
 しかし「侍戦隊シンケンジャー」は、真と偽、光と影の逆転でバラバラになってしまったヒーローがどうなるのかが描かれた。
 血筋と伝統でつながっていた侍達が影を助けに走り、丈瑠を友と慕う寿司屋が姫に助太刀する。

 光と闇が交差して、ひとつになろうとしている。









【予約受付中】【6/21発売】
スーパー戦隊シリーズ 侍戦隊シンケンジャー全12巻セット
【DVD】【送料無料】


メーカー希望小売価格 73,080円 (税込)
デジタルライフ特価!! 67,000円 (税込) 送料込

え、これBOXとは違うの?どうなん?

 
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/37348996

この記事へのトラックバック