2010年03月10日

侍戦隊シンケンジャー・考察 其の伍「受容」

 外道衆と戦うため、集められた侍達。それぞれ家に伝わるモヂカラだけが、外道衆から人の世を守ることが出来る。

 その使命の重さをそれぞれ深く受け止め、修練を重ねてきた彼等。だが生まれ育った環境や性格の違いから、志葉丈瑠との主従関係に対しては、反応は二つに分かれた。梨園の生まれで侍としての精神をたたき込まれた流ノ介は、大袈裟なほどにかたくなに主従を貫く。田舎育ちでどこかほんわりとした雰囲気のことはも、抵抗は全くないようだ。逆に現代っ子の千明はどこか反抗的で、茉子は一歩引いてクールに観察している。
 男二人、女二人の、それぞれの反応の違い。個性と性別が絡み合った、上手い配置だなあと思わされる。男性二人はそれぞれ、丈瑠との関係性の構築を、能動的主体的に考え行動(従うか/反発するか)している。そして女性二人は受け入れるか否か、の判断をしようとする。



 花織ことはは、非常に女性的・母性的なタイプのキャラクターだ。
 天然キャラといえばそうなのだが、同じ天然でも流ノ介が突っ走るタイプなのに対し、ことはは何でも受け入れて認めてしまう優しさがある。非常に懐深く、彼女の家に伝わるモヂカラの如く、大地のような穏やかさと包容力、温かさに満ちている。不器用で剣術と笛以外は何をやってもダメな事を、幼い頃は馬鹿にされたり責められたりしていたようだが、そうした自分の弱さすらも受け入れる、しなやかな強さを持つ。
 逆に言えば…少々言葉はきついが…あまり知的なタイプではない。理屈を言ったり、気の利いた言葉を発したりは出来ない。むしろ言葉そのものより、その笑顔が彼女の素直で優しい心を表現しているなと感じられる。
 ことはは自分をよく知るが故に、出来る事を精いっぱいやろうと誓って志葉家に仕え、シンケンジャーとして戦う。戦いにおいても生活においても、我を張ることはない上に、下手に理屈や理由をこねたり賢く立ち回るタイプでもない。だから多少のコンプレックスはありつつも大きな葛藤はなかった。それが逆に彼女の自立性に疑問を抱かせたりもするが(「殿執事」)、決して愚かではないのだ。彼女はシンケンジャーの中でも愛されキャラであり、癒し系だった。

 そんなことはが、唯一深く葛藤したのが、終盤も迫った頃に描かれた姉とのエピだろう。ことはの「出来ない自分」コンプレックスと「姉の代わり」としての自己アイデンティティ。その曖昧で頼りない自我の揺らぎを、彼女は【甘え】と言った。「もうお姉ちゃんの代わりって言わへん。それも甘えだって分かった」…出来ない自分に対して、「姉の代わりだから出来ないんだ」と、無意識に責任転嫁している事に気付いたのだ。
 しかしこの洞察は、かなり深く自分の弱さを見つめていないと出来ないだろう。しかもこのセリフを言いきれるだけの説得力がキャラクターにないと、上辺だけの言葉に感じて胸に響いてこない。決して知的で雄弁な女の子でないからこそ、彼女の決意や言動に重みがある…そんな風に感じられたのは、キャラと役者が見事に一人の女性像を作り上げていたからだなと思う。

 そしてこの話は、十臓に己の弱さを見抜かれ、迷ってしまった丈瑠の復活エピでもあった。見ていた当時は「なぜここで丈瑠が復活するのか。いったい何を彼は迷っていたのか」十分に描写されたと思えなかった。しかし、今ならそれが分かる気がする。
 殿様の変調に、なんの助けにもならないことを思い悩むことはと日下部の会話を、影から聞いてしまった丈瑠。あの優しく可愛らしいことはが、姉の代わりとしての自分の至らなさを悩み、自分の事を心配してくれている。「もっともっと頑張らな」と決意している。「姉ちゃんの代わり」のことはと、「志葉家十八代目の影武者」の丈瑠。自分が背負うべきは、もっと重いものではなかったのか。中途半端な覚悟ほどみっともないものはない…
 丈瑠は密かに己の役割と、ことはの立場を重ね合わせていたのではないか、と私は思う。




 覚悟を新たにし、その重責を改めて負った丈瑠。
 しかし、本来の志葉家十八台目当主である薫姫の出陣に、その覚悟すらもお役御免となる。影武者として生きる事を運命づけられた日から今まで、積み重ねてきた当主としての自分。それはすべて偽りであると白日の下に晒された。
 戦う理由も、覚悟も、仲間も。全てを失ってしまった丈瑠。そして呟くのだ。

 「俺は殿様じゃない自分は初めて見た…びっくりするほど何もないな」


 どんなときでも笑顔で自分のすべき事を受け入れ、従ってきたことは。
 この一年で、その素直な性格そのままに、侍として大きく成長してきた。
 しかし薫姫とともに出陣したことはは、外道衆との戦いに勝って、でも心の中で叫ぶ。

 「違う…こんなん違う…殿様!」
 







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めっちゃアイドルしている写真にびっくりだ!彼女本当に頑張ったね。

 
この記事へのコメント
Kさんはじめまして!
シンケンジャー開始当初から、楽しく読ませていただいてます。
戦隊は、早く目が覚めたらライダーの前に流し見する程度だったのですが、シンケンジャーはシナリオ・キャラ描写がよく練られており、殺陣の美しさもあって一話もかかさず見てました^^
この総括もどこまで続くのか先が気になります。その分、今のゴセイジャーは・・・という感じですが^^;

ことは役で知ったすぅちゃんがお気に入りだったので、某動画サイトでアイドリングをチェックしてみましたが、中々面白いですよb
Posted by mizu at 2010年03月13日 13:48
mizuさん、はじめまして!書き込みありがとうございます。

そうですね、まさか私もここまで熱中してしまうとは思わなかったほどには
この一年間夢中になってシンケンジャーを見てしまいました。
どのキャラも魅力的で離しも良く来ていて、見ごたえありましたよね。
その点、ゴセイジャーはちょっと評価が厳しくなってしまって
気の毒な気がするほどです(^^;;;
この総括は…どこまで続くのか自分でもよく分かりませんが
余りだらだら書いても仕方ないのでポイントを絞りたいなとは
思っているんですよね、これでも(笑)
涼花さんかわいいですね〜でも目に力がある娘ですよね。
ラストの名乗りのりりしさも素晴らしかったなあと改めて思います。
Posted by K at 2010年03月13日 16:51
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