シンケンジャーは明確な主従関係で結ばれており、戦隊ヒーローとしてはかなりイレギュラーな存在だ。番組の顔とも言えるOP画面でも、戦隊の華である名乗りでも、殿であるレッドのそばに控える四人の姿が映し出される。
スーパー戦隊シリーズというのは、毎年毎年さまざまなモチーフが使われる。忍者も刑事も魔法使いも何でもアリだ。だから今更、チャンバラや侍が取り入れられても不思議ではない。しかしヒーローとしてはまず「チームありき」のスーパー戦隊に、この「殿と家臣」というハッキリとした上下関係を、ここまで設定として組み込んできた事はないだろう。
しかもそれが単に、シリーズの差別化としての設定ではなく、ドラマの中で大きな意味を持っているところが、この作品の妙味だ。また人物の立ち居地には一切の無駄がなく、その中心に主君であり、物語の主人公である丈瑠がいる。
が、彼の表情は常に、硬い…
丈瑠の元に集まった四人の侍。互いにその存在は知っていても、実際に対面したのは、第一話のあの時だ。生まれも育ちも別々で、主君からの呼び出しへの反応も様々な、個性豊かな若者たち。
その中で谷千明、という青年は、最初はひねくれたタイプに見える。特に丈瑠を「殿」として仰ぐ事に反抗するのだ。
では、彼は本当にひねくれ者かというと、そうではない。人を守って戦う自分の使命には真っ直ぐだ。屋敷を飛び出し、昔の友達と再会したときでさえ「(今の特殊な状況に対して)納得はしている」と話している。外道衆に苦しむ人々や、共に戦う仲間を見捨てる事も、決してない。
むしろ彼は、未熟さはあるが至って素直で明るい熱血青年で、性格的には主人公タイプだと言っても良い。クルクルと変わる表情や、ユーモラスな言動も好感度が高い。そしてもう一つ踏み込んで言えば、彼は如何にも「現代的なヒーロー像」として描かれているのだ。物おじしない明るさ、強い正義感と使命感、戦う仲間、そして戦士として男として超えたい相手。千明のエピに良作が多いのは、成長するヒーローとして相応しいキャラクターを持っているからだろう。
キャラの立ち位置としては、千明はこの時代錯誤な主従関係を軸としたストーリー展開に、伝統に批判的な現代の若者の視点を加える事で、自然と視聴者を作品世界になじませる意図があったのだろう。それはそれとして、改めて考えたい。千明はなぜ、反抗したのか。
恐らくそれは千明が「家や運命に決められた」のではない、「自分の価値観」で納得したかったからではないか、と私は思う。千明は、至って自由で現代的な感覚の持ち主、簡単に言えば個人主義的なのだ。彼は戦う事には納得していても、誰かに従う事に同意しているわけではない。その誰かが、何を考えているのかよく分からない、とりすました若者ならばなおのことだ。
千明の主君であり、この物語の主人公である丈瑠は、常に冷静沈着。余計な事は言わず、ものの言い方一つ一つも淡々としている。眼差しはきつく表情も変わらず、序盤は笑顔すらほとんど見られない。どこか侍たちには壁を作っており、皆より一段高い位置に座る、あの座敷そのままの態度を崩す事はない。まさに千明と真逆のタイプで、親しみやすさからは程遠い。完全に自由な個人としての自分を殺し、大義のために生きているのだ。
そんな丈瑠に従う事を、千明は「俺より強いから、超えたい」という理由をつけて納得する。丈瑠の剣の腕はもちろん、侍としての心得の全てが、自分より遥か上のレベルであると認めたからだろう。そして彼の成長とともに、自然と丈瑠への態度は改まる。相変わらず「丈瑠」と呼び捨てにするし、平気で上座に座ったりもするが、シンケンジャーの侍の一人として、立派に役目を果たすようになる。
丈瑠は確かに表情は硬く、態度は崩す事はない。しかし殿様という威を振りかざす男ではなかった。その言動の全ては、比類なき覚悟と強さを以て、志葉家当主として立つが故だった。
真実が明るみに晒され、立場が変わってしまったとしても、それになんの意味があるのか。
確かに嘘はついていたろう。しかしそんなものは、一発のパンチでチャラに出来る、その程度のものでしかない。
「強いから従う」のではなく、もちろん「殿だから」でもない。
「丈瑠だから」千明は一緒に戦ってきたのだから。
侍戦隊シンケンジャー オリジナルアルバム 秘伝音盤 第一幕


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「戦国時代を舞台にした戦隊シリーズ『侍戦隊シンケンジャー』」っておいおい!w
涙が。。。読んでて涙が。。。
なんで自分が毎回グッときて
涙腺がゆるむのか、わかりました。
師匠の言葉ってシンケンジャーに限らず
どの作品に対しても、すごく温かい。
何ていうか、子供を遠くから見守る母みたいな。
決して上から目線だったり、声高な批判じゃなくて。
だから、映像でもない、ましてやBGMがかかってる訳じゃない、
ただ、パソコンの画面に写る文字を目で追っているだけなのに
こんな気持ちになっちゃうんですね。
ほんっと!!ありがとうございます♪
千明考察読みながら、「だからか〜!!」
と納得の嵐です♪
自分がなんで千明に目が行くのか、
どうして剣も心得も未熟な彼が気になってしまうのか・・・
そっか・・・。もし違う戦隊だったら
千明がレッドの位置にいてもおかしくなかったんですね。
まっすぐでがむしゃらで、時に突っ走りすぎて
挫折して・・・そこから成長して・・・って
ほんとレッドの立ち位置ですね(笑)
そんな千明がグリーンでいるシンケンジャーだからここまでハマったのかな・・・。
1幕から丁寧に緻密に家臣それぞれの
思いや信条を描いてきたからこそ
47幕でのそれぞれの行動、言動に
あんなに泣いちゃうんでしょうね・・・。
侍として動けない流ノ介の気持ちは痛いほど伝わるし、
それを察する茉子ちゃんが肩に手を置くのも。
駆けつけずにはいられない千明とことはも。
ごめんなさい。長々と・・・・。
全くまとまりのない文章ですが、
お伝えしたいのは
「次も楽しみにしてます♪」
です!
励みになりますよ、すごく!
師匠なんて言って頂けるような、そんなたいしたもんじゃないんですが(^^;;;
ただ、特撮ヒーローと制作スタッフへ敬愛の念を持って書いてます。
ただやっぱり、私も嘘は書けないんですよ。
良かった部分は素直に書けるんですけど、残念なものは残念だと
正直に書きますからね。
で、シンケンジャーはと言うと、残念な部分はすごく少なくて
逆に非常に引き込まれ、楽しんで、感動しつつ観ましたから。
千明は私も大好きなキャラですね。
「シンケンジャー」って、千明を主役につくる事も出来たし
むしろその方が子供番組っぽい作りにはなるんですよ。
でもそうじゃないところが、まあ妙味、としか言えないんですが…
でもほんと、千明のエピに外れなし!ですよね。
まー47幕は観ているこっちも涙、涙でしたが、
あのどうしようもない雰囲気を、一発のパンチで壊す事が出来たのは
千明だから、でしょうね。
同じ事を、もしもあの場に源太がいたら出来たかもしれませんけど
あれは正統な侍である千明がやるからいいんでしょう。
よかったらどうぞ続きも読んでください。嬉しいです。