人の世を守る。その重く辛い使命を幼い息子に託し、逝かなくてはならなかった父。その無念と決意を受け止め、影武者としての人生を歩んだ丈瑠。友との約束を果たす為、時に優しく時に毅然と、当主としての心得を教え導いた日下部。そしてついに丈瑠はその強さ・意思・器量いずれも、志葉家当主としてふさわしい青年に成長した。
自分の業に他人を巻き込むのを嫌い、孤独の中で戦ってきた丈瑠だったが、ついに四人の侍たちが集められる日が来る。男性が二人、女性が二人。いずれも全く別の家で育った、個性も価値観も異なる四人だ。
当主と四人の侍。一人として同じ個性のキャラクターはいないのだが、それぞれの丈瑠との対比が非常に面白い。「侍戦隊シンケンジャー」という物語に描かれた、戦隊ヒーローとしての丈瑠の生き様を読み解くため、侍一人一人にスポットを当てていく試みをしたいと思う。
まずは、男性キャラから始めたい。流ノ介と千明。彼等は非常に対照的な二人だ。方や堅物の極みであり、もう一方はどこか自由気ままな性質。序盤は流ノ介の天然バカっぷりで笑わせ、千明の丈瑠への反発が物語を引っ張った。
やはりここは、シンケンジャーの二番手、池波流ノ介からキャラ考察をしていきたい。
流ノ介は、印象としてとにかく「まっすぐな男」だったなと思う。侍の家系であり梨園の生まれ。四人の中でも最も「侍」であり、ガチガチと言ってもいいほどの堅物。基本的な性格も、純粋無垢なのだろう。その上、家もその使命に厳格であり、侍としての技や心得をたたき込まれていたようだ。
ファザコンと揶揄された流ノ介ではあるが、第一話の舞台の上での父親との会話を見た限り、父に対する敬愛の念が見える。彼の迷いのない忠義の心は、父より受け継いだものなのだろう。
寿司屋の源太が参加したとき、そのきっちりとした生活ぶりが描かれたが、ちゃんと歌舞伎の舞の稽古までしていたのには驚いた。侍たるもの、規則正しく生活する。稽古は欠かさず、常に精進。自分の立場をわきまえ、お仕えする殿には絶対服従し、自分の命に代えても守る。が、時として必要ならば殿の過ちを正そうとするのもまた忠義。
かなり天然でおまぬけな面を持ちながらも、そういう日ごろの生活と、丈瑠に継ぐ剣の腕で、周りの仲間はもちろん丈瑠からも一目置かれていた。天然馬鹿と実力者という正反対のイメージが、ひとりの人間のパーソナリティとして成り立っている。これはキャラ立ての上手さと、それを支える役者の演技があってこそだろう。
そんな流ノ介の親子関係を見ると、どこか丈瑠のそれと重なる。丈瑠が学んだのは逆に帝王学なのだろうが、自分を導く父性に対して、強い使命感と熱意を持って我が物とした姿勢は、似ている。ただ違うのは、丈瑠は影武者ゆえにその立場をかりそめのものと捉えているのに対して、流ノ介は純血種である分、自己同一化しきっている点だ。
それ故に、ヒーローとしてよくある変身するときの「戦いの決意」が必要なかった。人の世のために戦い、殿をお守りする。それが彼の行動原理にしみ込んでいるからだ。だから序盤の舵木折神のエピで、謎の男に「それは刷り込みじゃないのか?」と問われるまでは、なんの疑問も持たなかった。改めて自分の心に問うた流ノ介は、自分なりの答えを出す。「この殿なら命を預けて戦う事が出来る」と。
流ノ介が出したそんな答えを導き出せたのも、自分の意思で主を選ぶ事が出来たのも、すべて丈瑠の戦う姿勢に偽りがなかったからに他ならない。
丈瑠の「殿」としての在り方、剣の実力、戦いへの強い意志は、影武者という嘘の上に成り立っていたものだろう。しかし、背負い続けた志葉毛当主の重みに偽りはなかった。心の底まで純血種の侍である流ノ介が、これほどまでに心酔できる主。それが丈瑠だったのだ。
幼い頃からたたき込まれた侍としての心得。その滅私の心は誰もが認める男、流ノ介。
しかし、その前提である主従関係が崩れ去り、本当の主君の存在を知った時、流ノ介は葛藤するのだ。滅私奉公。自分のすべき事に選択の余地はないはずなのに、と。そこで再度、あの男が問う。おまえが命を預けたのは、器なのか、中身なのか?
彼は誰よりも純粋で、誰よりも強い意志で【侍】として生きていた。
そんな青年が、影を助けに走る。
執着の炎が渦巻くその向こう、まっすぐに丈瑠に向かって開かれた道の先に立っていたのは、確かな光をその目に宿した、決してここに来ないはずの流ノ介だった。
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ジャケットすげーな!
今までの各話の考察と合わせて
本にすれば良いのに〜!!!
この総括を読むだけで、
目頭も胸も熱くなるのは
私がシンケンジャーの深みに
はまりすぎているからだけではないと思います。
本編の終了後に、このような素敵な文章を
読むことができてとても嬉しいです。
本当にありがとうございます。
いや〜実を言うと本当にお恥ずかしい話なのですが、
私自身、時々こういうの書いていて目頭熱くしちゃうんですよ。
書くためには色々と思い出すじゃないですか、いろんなシーンを。
そしたらついついですね、その時の感動がよみがえっちゃって…
自分の受け止めた感動を、そのまま文章に出来ればなと思っています。
だからそんなふうに言っていただけると本当にうれしいですよ。
やっぱ本っつーと、同人誌とかですかね〜
憧れるけど、さすがにこーゆーのは余り需要なさそうだな(笑)