2010年02月09日

侍戦隊シンケンジャー・考察 其の壱「子供番組」

 先日、2009年スーパー戦隊シリーズ、「侍戦隊シンケンジャー」のTVシリーズが終了した。現代を舞台に、時代劇を思わせる設定、そして特撮の奇想天外をミックスさせた、興味深い物語だったと思う。
 最初に言っておくと、私はこの一年、とても楽しんだ。涙もろいのもあって、何度も目頭を熱くさせられた。勿論、所々に思うところもある。が、それを差し引いても、お話として面白かったなあと思わされた。要は、私的に結構ツボだったわけだ。だから多分、この総括も肯定的な内容になるだろう。
 以下、思うままに書き連ねていこうと思う。




 さて、総括をどこから書こうかと頭を悩ませ、パッと思い浮かんだ「シンケンジャー」の作品の印象は「なんと深刻な物語だったことよ」だった。

 代々伝わる戦いの系譜と主従関係。身の毛もよだつ恐怖をもたらす闇の存在との戦い。若者達は自分の置かれていた状況も願望も投げ打って、その身を戦禍に投じなくてはならない。彼等が背負った運命故の苦悩… 有り得ないほどストイックな戦隊だ。いやむしろ、「戦隊モノだから」娯楽作として楽しめるのであって、その派手さとケレン味が、この重い内容を中和させていると言ってもいいのではなかろうか。
 しかも戦隊の中でも華であり、リーダー格であるレッドが、他のメンバーより格上の殿様である、という設定。この明らかな力関係のヒエラルキーは、戦隊としてはかなり特殊だ。しかも、敵の大将を倒せるのは志葉家当主のレッドのみというのも大胆な設定だろう。戦隊と言えば、全員が協力して最大の敵を倒すのが醍醐味でもあるのだから。
 その上に、その当主である青年・志波丈瑠は影武者だったという、根底を覆す展開が物語の中に織り込まれていた。さすがにこの展開には驚かされる。思わず物語に引きずり込まれてしまって、次がどうなるのか画面に見入ってしまった。



 さて、ここでひとつ、誰もが思う疑問がある。
 子供達って、ついて来られたのか?この展開に。
 いや、ストーリーなんて子供は余り気にしていないことが多い。しかし主人公が自己否定感に苦しむという、こんな重い展開、子供達に相応しかったのだろうか。



 当たり前なのだが、特撮作品は子供番組だ。特に戦隊モノは、ライダーに比べて低年齢層が主なターゲットになっている。
 私は個人的に、特撮が子供達の為に作られた映像作品であることは、とても重要なことだと思っている。子供達に語りかけるお話としての、正義のヒーロー。あなたは幼い子供達に、生きることの悲惨さや苦しさを描いた物語を話して聞かせたいだろうか?人生のスタートに出会うお話として、欲望に溺れて自滅していく愚かさや皮肉を贈るだろうか。多分そんな人はいないだろう。
 それ故に、特撮作品には高度なヒューマニティーが描かれていることが多い。相対論で考えてしまえば正義も悪も分からなくなっている現代だが、それでも愛と善の心は確かにある。正義だってあるだろう。そこをきっちりと描くことは、子供向け番組の矜持と言ってもいい。(←ここについては2008年05月23日『子供向けであることの素晴らしさ』の日記も、良かったら読んで下さい)
 戦うことで、日常を犠牲にしなくてはならなかった家臣の侍達。主君に命を預ける、ギリギリの攻防戦。しかもそのヒーローが偽りの存在であった、という驚くほどのどんでん返し。子供向け番組としてのヒーローものなら、いくらでも明るい作品にもしようがあるというのに、この重さ!ああ、私は面白かったよ?でも親として考えてしまった。「侍戦隊シンケンジャー」って、子供番組としてはありなんだろうかと。

 色々と考えたが、やはり「ありなんだろう」というのが、私なりの結論だ。

 確かに苦悩もするし葛藤もあった。描写の中に巧みに虚実も入り交じっていた。しかし、葛藤も嘘も全てが「外道衆から人の世を守るために」という、只その一点のために紡ぎ出されたものではないだろうか。
 そこには底抜けの明るさや楽しさなどはないかもしれない。しかし揺るぎない正義がある。
 流ノ介は歌舞伎役者としての舞台を降りてまでも、千明は性に合わない主従関係を受け容れつつも、茉子は平凡な女の子としての生活と親の愛に飢えながらも、ことはは優秀な姉の身代わりとしての不出来な自分にあらがいつつも、侍としての戦いをやめることはなかった。すべてが人の世を守るため。それは家臣も黒子も変わりない。
 そしてそのモヂカラの才能故に、志葉家当主という名を背負う影武者として選ばれた、運命の子・丈瑠。幼い息子に過酷な試練を与えなくてはならなかった父も、その父の意志を継いで当主としての教育を施さなくてはならなかった日下部も、その使命の大切さを誰よりも理解していた。志葉家当主の重みを背負い、飛び続けろ…その言葉の裏に、どれ程の思いがあったろうか。
 「人の世を守る」という重み、それは確かに丈瑠に伝わり、それ故に彼は戦い続けたのである。元来はしなくてもいいはずの戦いを戦い抜き、つかなくてもいい嘘をつき、仲間達に賭けなくてもいい命を賭けさせたのだ。




 シンケンジャー達の行動は、ある種の自己犠牲のように見える。が、その根底に流れる精神は、「この世を守る」というヒーロースピリッツである。
 その一点で、私はこの作品は子供番組として、ありなのではないかと思うのだ。



やっぱりまとまらなかったので、つづく。







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