2009年06月03日

天元突破グレンラガン考・7 覚

 絶望の宇宙に風穴を開けるために生まれた男、シモン。
 暗闇の向こうに光の存在があることを教え、導いてくれたカミナは、唐突に死ぬ。



 限界を知らない彼の性格上、死力を尽くす戦いの中で長生きが出来ないのは道理なのかも知れない。しかしそれはシモンにとってあまりに突然だった。深い深い喪失感に、自分自身までも見失ってしまったシモンは、自らを封印してしまう。
 その間、シモンの耳には誰の言葉も届かない。顔つきまですっかり変わってしまい、戦うことすら満足に出来ない酷い状態になってしまった。
 グレン団の仲間達も、自分のことで精一杯で誰も何もしてやれない。唯一、死の淵から復活した螺旋王の王女・ニアだけがシモン自身の力を認める言葉をかけ続けていたが、彼女の優しささえ直接の救いにはならなかった。



 「アニキ」の喪失と自立。



 シモンにとってカミナとは、単に心の通じ合う兄弟、というだけの存在ではなかった。
 「カミナは種まき人である」という仮説を前提としよう。それならば、カミナがシモンに語っていた言葉は、直接シモンの魂に種を蒔き続けていたと言うことになる。シモンはカミナの言葉によって、己の魂の居所を知り、為すべき事を教えられた。
 それは魂にとってこの上もない歓びであると同時に、依存にもなる。
 アニキはすごい。アニキの言うとおりにすればいい。アニキが信じてくれる俺を信じればいい。アニキ。アニキ。アニキ!
 …しかし、カミナはいなくなってしまった。自分の魂の拠り所のなくなったシモンは、まるで自分自身の魂を失ってしまったように感じてしまう。
 カミナの強い影響力を肌に感じて分かっているグレン団のメンバーは、シモンが抜け殻のようになってしまっているのを、ある意味「納得」してしまったのだろう。何故なら彼等自身もシモン程ではないにしても、大きな喪失感を胸に抱えてしまっているからだ。共感すら感じるからこそ、苛立ちを覚える者もいる。



 誰もシモンを助けてやることは出来ない。
 シモンも心を閉ざし、誰の助けを借りようとしない。



 もしも。
 もしもシモンが、聡明な理解力を持つニアの「シモンはシモンであればいい」という言葉を素直に受け容れてしまったら。きっとシモンは、また自分の魂の在処を他人にゆだねてしまったことだろう。
 たとえ螺旋王との戦いに勝ったとしても、アンチスパイラルのメッセンジャーとして覚醒したニアの前に、その突破力は跡形もなくなってしまったに違いない。



 閉ざされた空間の中で、ただ、穴を掘る。
 孤独の中で深く自分を見つめることが出来たからこそ、改めて内なる光に気付く。
 遠く宇宙の果てまで進もうとする者は、より深く誰よりも深く、自分を見つめる強さがなくてはならない。作用と反作用。外へと向かう力の強さは、内へと掘り進む力とイコールだ。




 俺は俺だ!




 シモンは自分が出来ること、自分のすべき事を識る。
 魂は己の内に最初から光を放っていたことに気付く。

 今こそ、真の意味でカミナの言葉を胸の奥深くで受け止められる。



 ここはグレンラガンの物語の中でも非常に重要な位置づけのターニングポイントといえるのではないかと思う。
 シモンの復活には、4部構成26話のスピーディーな物語の中の3話が費やされる。それは説得力を持たせるギリギリの長さだったのではないだろうか。これより短いと短絡的であり、長いとアンバランスだったろう。
 失ったものの大きさ。それを乗り越えて真の己を見出す強さ。シモンの復活は、十分それを描き出していたのではないかと思う。あの展開の熱さは「天元突破グレンラガン」という作品の持つ、大いなる魅力の一つだろう。なによりも、安易に依存しない強さがあった。それがうれしい。






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これはかっちょええな〜
 
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