2009年01月20日

「仮面ライダーキバ」総括・2 宿命の鎖

 過去と現在。因果と結果が平行して描かれる「仮面ライダーキバ」。
 ではその物語が示したテーマとはなんだったのか、と言われれば、一言で表現すればやはり【親と子の絆】になるのだろう。
 親子の絆。しかし残念ながらそれはよいものばかりではない。「牙」の予告では必ずこう言われるのだ。「さだめの鎖を解き放て!」

 「さだめの鎖」

 私は神秘学や運命学、心理学などを広く浅く調べていた頃があった。その類の勉強をしたことがある方はよくご存じだろう…親が子にとって、どれだけ大きな存在であることか!かつて師と呼んだ人から聞いた言葉が忘れられない。「親は最大のカルマだ」と。それは良い意味でも悪い意味でも、子どもの人生を大きく左右する。
 「さだめの鎖」という言葉は、そうした親子の絆の持つネガティブサイドの印象を持つ。親子二代の物語である「キバ」で、毎回流れる主題歌が、予告が、「さだめの鎖を解き放て!」と叫ぶ。では一体、音也と真夜から渡に引き継がれた負の遺産、「さだめの鎖」とはいったい何だったのか。
 …それこそが「仮面ライダーキバがファンガイアと戦う」ことではなかったか。私はそう考えている。


 渡というキャラクターを思い浮かべてみて欲しい。彼は元来物静かで、優しく穏やかで気が弱く、コツコツと楽器作りという繊細な作業に集中する青年だ。どう考えてもバケモノ相手に戦う男ではないのである。
 では何故戦うのか?「声がするから」と彼は言う。ファンガイアが現れて人を襲うと、父の遺したバイオリンが鳴るのだ。人を守れと。その為に戦えと。
 彼はその意志と関係なく、戦わなくてはならないのである。何故ならば、そういう宿命に生まれついてしまった不運な青年だからだ。彼は自意識の中では知らなかったが、禁忌の血を持って生まれてしまった為に戦いの中に巻き込まれていくのだ。

 渡は、人間である紅音也とファンガイアのクイーンであった真夜の息子だ。そもそもここにいくつかのタブーがある。
 クイーンは元来、人とファンガイアが愛し合うことを禁ずる役割だった。理由ははっきりしないが、異種混血というタブーがあったと言うことなのだろう。そして真夜には夫と息子がいたし、音也にも結婚はしていないが愛を誓ったユリがいた。種を裏切り、パートナーを裏切って、それでも貫いてしまった愛。

 ただ過去編では、「なぜ二人は愛し合ってしまったのか」が、ちゃんと描かれていたと思った。(それ故にメロドラマという批判もあるわけだが)

 孤高の天才音也は、天才故に奇行が多く、平気で人の期待を袖にしてしまって、死後も詐欺で多くの人から訴えられる男でもあった。また気が多く、女は全て自分の女!と豪語する奔放さも持っている。つまりユリを裏切ってしまう伏線は序盤からあったわけだ。
 また真夜は、「愛することとはなにか」を知らない女だった。夫であるキングもいるし、息子として太牙を授かっていながら、愛とは何なのか、何故人を愛するファンガイアがいるのか、理解できないが故に知りたいと思っていた。
 音也の芸術…音也の魂…を、真夜は理解し、その美しい音色を愛した。その時、孤高の天才の魂は孤独ではなくなったのだ。彼等はお互いに、知らず知らずのうちに惹かれ合ってしまったのだろう。



 しかし、罪は罪…

 戦う意志を父親から、戦う力を母親から、否応なく受け継いでしまった渡は、好むと好まざるとに関わらず、変身してキバの鎧を身に纏う。それは衝動に近いものなのだろう。戦うときの渡は、それまでの彼とは全く違う強い目を持つ。
 よく聞く批判で、「渡が戦う理由・決意・背負うものがない」という意見がある。しかし、私はそうは思わない。
 彼が戦う理由は、"血"だ。決意は親から受け継いだ。背負うものは己の業。戦うヒーローとして、これ以上凄まじい理由はないだろう。親の因果の為に、自分は命を危険に晒さなくてはならないのだから。それも無自覚なままに、である。
 渡と、奇しくも「捨てられた子ども」になってしまった異父兄弟・太牙。彼等のさだめの鎖を解き放つのに必要なものとは…




 閑話休題。
 キングを裏切って不倫に走ったクイーン。余りにフォローしがたい存在だが、だからこそ個人的に、先代のキングのキャラクターはもっとDVバリバリの歪んだ男性原理を持った男なら良かったのに…と思う。
 彼は愛を拒絶してはいたが、裏切られて当然と思える程酷い男にも見えなかった。それ故に紅親子に殺され、赤子の息子にとどめを刺された上に、最終回で蘇ってまで戦わされたキングに同情してしまう。彼がもっと冷酷ならば、宿命に足掻いた兄弟の戦いを解釈しやすかったのだが。


 てなところで、また続く。




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キバットはもっと生かせたと思う。もったいない。

 
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Weblog: 地下室で手記
Tracked: 2009-01-21 00:29